PETのケミカルリサイクル その2

    Application Note B-TA2037

    はじめに

    PETボトルに代表されるPET素材のリサイクル推進には化学反応により原料もしくは有用な化成品に変換するケミカルリサイクルが重要です。ここではPETの通常の熱分解と水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を加えて加熱したケミカルリサイクル模擬試験の際に発生するベンゼンと安息香酸の発生量を光イオン化(PI)を採用したTG-MSにて調べました。

    測定・解析例

    PETシート片及びシート片とCa(OH)2の混合試料を不活性のHe雰囲気にて室温~800℃の範囲で20℃/minにて昇温しました。MSのイオン化にはPIを使用しました。PIはソフトイオン化の一種で分子イオンを確認しやすく、有機ガスの発生量比較に適しています。MSシグナルの温度プロファイルを図1(a)に示します。PETのみでは450℃付近にピークを持つ安息香酸と480℃付近にピークを持つベンゼンの発生が確認できました。一方、PET+Ca(OH)2では安息香酸のピークがPETのみに比べて著しく減少しており、逆にベンゼンは500℃以上でのピーク強度の増加が認められました。この反応機構についてはアプリバイト「PETのケミカルリサイクル その1」を参考にしてください。
    そこでベンゼン及び安息香酸の試薬を用いて検量線を作成し、図1(a)のピーク面積から各試料のベンゼンと安息香酸の発生量を定量しました。その結果を図1(b)に示します。ここではPET試料量を基準として重量パーセントにて表示しています。Ca(OH)2を加えることで、ベンゼンの発生量が10倍以上、安息香酸が1/40以下になっており、Ca(OH)2によって安息香酸の発生が抑制され、それに伴いベンゼン発生が促進されていることが分かります。

    (a) PIにて測定したPETのみPET+Ca(OH)2のMSシグナルの温度プロファイル. (b) 各MSシグナルを基にした発生ガスの定量値の比較.

    図1 (a) PIにて測定したPETのみPET+Ca(OH)2のMSシグナルの温度プロファイル. (b) 各MSシグナルを基にした発生ガスの定量値の比較.

    参考文献:S. Kumagai et. al., Journal of the Japan Petroleum Institute, 59(6) (2016) 243-253.

    推奨装置・推奨ソフトウェア

    • TG-DTA8122およびMASS-IFGC/MS
    • Thermo plus EVO2ソフトウェア、3次元解析ソフトウェア

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