AppNote B-XRD1109: PDF解析による強誘電体ナノ粒子の結晶構造評価
PDF解析による強誘電体ナノ粒子の結晶構造評価
強誘電体BaTiO₃ (BT) はコンデンサー材料として広く使われています。BTの強誘電性は正方晶の結晶構造と強く関係していますが、粒径が数十ナノメートル以下になると立方晶を示し強誘電性が消失されることが報告されています。BTの粒径による結晶構造の変化は、コア部が正方晶でシェル部が立方晶のシェル構造モデルにより説明されています。粉末材料の結晶構造解析法はX線回折プロファイルを用いたRietveld解析です。BTの場合、粒径が小さくなると正方性(tetragonality = c/a, aとcは格子定数)が1に近づき、Rietveld解析だけでは正方晶と立方晶の区別やシェルモデルに基づいた解析が困難になります。最近、近距離情報が得られるPDF(atomic Pair Distribution Function, 原子対相関関数, G(r))解析が注目されています。G(r)は距離“r”に離れた位置に原子が存在する存在確率の情報が得られるため、小さい正方性を示す結晶性の材料でも局所構造の対称性を考慮した解析が可能です。ここでは、PDF解析を用いてBT粉末材料の構造を評価します。