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全散乱データを使った原子スケールの構造解析

リガクジャーナル 2022年 10月 53巻 2号 通巻118号
27-36
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吉元 政嗣

これまで全散乱データは,2体分布関数(PDF)を算出するためのデータという位置づけであった.しかし,全散 乱データを使うことで,材料の物性値や特徴量を抽出できることが分かってきた.

本稿では,全散乱データを使っ た2つの新しい取り組みについて紹介する.1つ目は,全散乱データを使った原子スケールの材料の密度推定法で ある.ここで提案した方法で得られたSiO2ガラスやその他の材料のミクロな原子数密度は文献で報告されている 値と誤差5%未満で一致する結果となった.2つ目は,結晶性材料の全散乱データに基づいた局所構造の推定につ いて,Reverse Monte-Carlo(RMC)法を適用し,その際,測定データに現れる回折ピークの計算に,装置関数など のパラメーターを一切必要としない方法を考案した.その方法を適用して推定したマンガン酸リチウムの構造モ デルから,MnO6八面体に特徴的な構造歪みが再現された.

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