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リガクジャーナル 2023年 4月 54巻 1号 通巻119号

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リガクジャーナル 2023年 4月 54巻 1号 通巻119号

小惑星リュウグウ試料の分析 ―XRFとTG-MSによる地球外物質の評価―

本間 寿, 本村 和子

小惑星探査機「はやぶさ2」は小惑星リュウグウへのタッチダウンを行い表面試料の採取に成功した.試料を格納した回収カプセルは2020 年12 月6 日地球に帰還し,5.4 g の試料が回収された.

回収されたリュウグウ試料の一部を用い,波長分散型蛍光X線分析装置ZSX Primus IVおよび示差熱天秤–ガスクロマトグラフィー質量分析同時測定システムThermo plus EVO2 TG-DTA8122/GC-MS(TG-MS)による分析を行った.

蛍光X線分析には試料番号C0108を用いた.少量試料(24 mg)かつ粉末のまま測定するという制約条件を解決するため新たに真空システムを開発し,リュウグウ試料分析用として装置に搭載した.分析法はファンダメンタルパラメータ(FP)法を用い,トータル酸素量を定量することで試料中に含まれる水分量の影響を考慮したアプリケーションとし,効果を確認した.23 元素の定量分析を行い,ICP-MSともよく一致する結果が得られた.リュウグウ試料の元素組成は,炭素質コンドライト隕石と類似の組成であることが明らかになった.

熱分析は約1 mg のリュウグウ試料(A0040)を用いた.リュウグウ試料のトータルH₂O量,CO₂ 量はそれぞれ6.8 mass%と5.5 mass%であった.比較として測定した炭素質コンドライト隕石(Ivuna隕石:CIコンドライト隕石)よりもリュウグウ試料はH2Oのトータル含有量が小さい.これは300°C以下の低温領域で発生するH₂O量が両者で大きく異なるためであることがわかった.

X線トポグラフ測定におけるスループットの劇的な向上

島本 憲太

スループットを向上させた(10–20 枚/hour, 3–6 分/1 枚)ウェーハ欠陥評価用途の高速X線トポグラフシステムをリガクは市場に投入した.発散ビームとハイブリッドピクセル検出器HyPix-3000HEの組み合わせで画像取得の高速化を実現したことにより,スループットが劇的に高いX線トポグラフ検査ツールを構築することが可能となった.本テクニカルノートでは,測定の高速化に寄与した2 大要素,撮像準備工程の省略と撮像プロセスそのものの短縮について解説し,ウェーハの品質管理への利用を視野に入れた応用事例を紹介する.

粉末X線回折法 基礎講座 第6回 結晶子サイズ評価

小西 真晶

粉末X 線回折法は単一の情報だけではなく,様々な情報を引き出すことが可能である.粉末X 線回折法基礎講義第5 回では「定量分析」に関して述べた.第6 回では,「結晶子サイズ評価」について述べる.

結晶子サイズ評価で広く使われている解析法の1 つが,シェラー法である.シェラー法は,結晶子サイズ分布や格子歪がないと仮定し,1本の回折ピークの幅からシェラーの式を用いて簡易的に結晶子サイズを算出する.こちらの手法は,正確な結晶子サイズを得るにあたって幅補正を行うために幅標準物質の測定が必要になる.

一方で,FP(Fundamental Parameter)法を利用した結晶子サイズ評価は,装置由来のピーク幅の広がりを計算し,補正することができる.本手法は,結晶子サイズが300 nm 以下の場合,光学系条件や測定装置に関わらず数nm程度の精度で解析することができる.また他の測定手法とも相関があり,正確度の高い結晶子サイズとその分布を算出することが可能である.さらに,100–300 nm の大きな結晶子サイズについて,結晶子の異方性を考慮したに評価することができる.

シームレス多次元ピクセル検出器 XSPA-400 ER

シームレス多次元ピクセル検出器XSPA-400 ER*(XSPA: X-ray Seamless Pixel Array, ER : Energy Resolution)は,従来よりもエネルギー分解能を高めた次世代の2 次元半導体検出器です.その高いエネルギー分解能によって試料由来の蛍光X 線の影響を低減し,低バックグラウンド(BG)の回折パターンを取得することが可能となります.また検出面全体に65,536 個のピクセルが配列されており,0 次元・1 次元パターン測定に加えて,2 次元パターン測定を用いることでデバイ- シェラー環を観測することができ,試料の配向状態や粗大粒子の影響を確認することができます.更にピクセルサイズは75μm×75μm のため,高い空間分解能を実現しています.これらの特長を活かすことにより,鉄鋼材料や電池材料のような遷移金属元素を有するBG が高い試料に対して,微量結晶相の定量分析・格子定数の精密解析・2 次元応力解析等の分析精度向上に貢献できます.

実験動物用3DマイクロX線CT CosmoScan GXIII


実験動物用3D マイクロX 線CT 装置であるCosmo- Scan GX シリーズは,X 線の高出力化および高分解能撮影機能の強化により,生体を撮影するin vivoイメージング,生体より摘出した臓器や骨を撮影するex vivo イメージング両方を一台で実現するCosmoScan GXIII へと更に進化しました.ここではCosmoScan GXIII を,in vivo 向きの高出力・高速CT 撮影,ex vivo向きの高精細CT 撮影およびJob Scan 機能による長尺撮影の3 つの特長を中心に紹介いたします.


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