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アプリケーション例:ウルトラキャリーによる水溶液中の微量重金属分析


専用真空乾燥システムによりさらに分析がスピードアップしました。

何ができるのか?

排水基準を定める省令等の一部改正により全亜鉛(Zn)の環境基準が従来の排水基準5mg/Lから改正後排水基準2mg/Lになりました。(適用期日等:平成18年12月11日~ 詳細は省令をご覧下さい。)本報告は分解能が優れた波長分散型蛍光X線分析を用いた水溶液中のZnの分析例および河川水をウルトラキャリー(高感度定量濾紙)にて分析した例についてご紹介します。

 

測定例

■試料調整について

Fig.1に示しますようにウルトラキャリーに滴下する溶液量は500μL/1回です。滴下した液は乾燥機等を用いて乾燥しますが、通常は乾燥までに速くても約2時間弱かかります。しかし、専用の真空試料乾燥器ウルトラドライを用いると約20~30分間で乾燥することが可能です。
乾燥したウルトラキャリーはFig.2のように分析時の散乱線防止のためAlカップに乗せ、蛍光X線分析装置付属の試料ホルダにセットして測定いたします。 Fig.1 ウルトラキャリー、Fig2 試料ホルダ

 

■水中のZnの分析

水道水にZnの原子吸光標準液をそれぞれ1ppm,2ppm,5ppm,10ppm添加した溶液を作成し、ウルトラキャリーに500μL滴下乾燥して定性分析した結果をFig.3に示します。明確にZnのピークが確認されています。ウルトラドライを用いているため、滴下した後の乾燥時間に約30分、定性測定時間に2~3分/1試料で迅速に分析が終了します。
Fig.3 水中のZnの定性チャート
Fig.3 水中のZnの定性チャート

 

■河川中の微量重金属の分析

ウルトラドライはウルトラキャリーの乾燥だけでなく、溶液の濃縮を簡便に行うことができます。Fig,4,5,6は河川標準液NIST1643cを50倍に濃縮した溶液をウルトラキャリーに滴下し、乾燥させ、定性分析した結果です。標準液に含まれるAs:82.1ppb,Pb:35.3ppb,Se:12.7ppb,Rb:11.4ppb,Zn:73.9ppb,Cr:19.0ppb,V:31.4ppbのピークを明確に確認することができます。
Fig.4 河川水の定性チャート(2θ:21°~36°)
Fig.4 河川水の定性チャート(2θ:21°~36°)

 

Fig.5 河川水の定性チャート(2θ:40°~43°)

Fig.5 河川水の定性チャート(2θ:40°~43°)

Fig.6 河川水の定性チャート(2θ:66°~80°)

Fig.6 河川水の定性チャート(2θ:66°~80°)

 

まとめ

工場排水では種々の元素が含まれますので、あらかじめこのような元素分析をおこない知見を得ることは原子吸光分析、ICPでの分析に際しても重要な役割をはたします。
ウルトラキャリーを用いた分析方法は試料前処理が単純で、ほとんど経験も不要であるため、人為的な分析誤差も少ないにもかかわらず、ppbレベルの分析が可能な非常に優れた分析法であると云えます。

 

参考文献

1)X線分析の進歩 第36集pp.201-212 (2005)
2)亜鉛の排水基準改正について
  http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7681
 

 

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