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アプリケーション例:未成形粉末試料の真空雰囲気による定量分析

何ができるのか?

グラファイト,マイカ,分散剤を混入したトナーなど加圧成型できない試料や測定後試料粉末をそのまま回収する必要がある場合は、専用のアクセサリを用いてルースパウダー法で測定します。ここでご紹介するアクセサリは上面照射型装置用ですが、下面照射型装置では分析窓用薄膜をはったポリエチレン容器(Cat.No.CH1540,1530など)にフィルター(Cat.No.RS HD-10など)をふたとして使用することで、同様の測定を行うことができます。

ルースパウダ用試料容器

測定例

高炉スラグを真空雰囲気で粉末のまま分析した場合と加圧成型した場合を比較しました。なお,直接比較をするためにマトリックス補正は行っていません。

・試料調整
粉末試料容器(Cat.No.RS640)にそれぞれ試料約10gを採取しました。試料表面は軽元素測定のためポリプロピレン膜を用いました。また,真空雰囲気で測定することから試料容器内の空気を抜くため試料底面 は10μmメッシュを使用しました。分析面は図1の中容器を押し上げて試料をポリプロピレン膜面に合わせました。

図1 試料のセット

図1 試料のセット

図2 試料ホルダへのセット

図2 試料ホルダへのセット

・測定条件

 
計数時間 : 重元素 10sec  軽元素 20sec.
分析試料 : 日本鉄鋼協会製 高炉スラグ 他   計5点
測定雰囲気 : 真空
試料マスク : 30mmφ

・測定結果および考察
主要成分の検量線を図3,正確度を表1に示しました。ルースパウダ法は加圧成型法に比べポリプロピレン膜の影響でX線強度が軽元素ほど低くなっています。Feはポリプロピレン膜の影響はほとんどありません。検量線からの各測定点のばらつき具合をみると,ルースパウダ法,加圧成型法とも同じように高く外れる点は高く,低い点は低くなっており非常によい相関があります。また,ばらつきはマトリックスの影響など試料固有の原因であることを示しています。

図3 高炉スラグの検量線

図3 高炉スラグの検量線

表1 検量線の正確度 (σd) mass%
成 分 含有率範囲 ルースパウダ法 加圧成型法
CaO 32~45 0.31 0.27
SiO2 32~36 0.54 0.25
Al2O3 7~15 0.12 0.17
T.Fe 0.1~0.6 0.0068 0.0056
MgO 2.5~8.0 0.088 0.14
TiO2 0.3~2.0 0.020 0.021
MnO 0.07~1.0 0.0086 0.0022
K 0.2~0.6 0.014 0.017
Na 0.15~0.26 0.011 0.0083

ルースパウダ試料容器のポリプロピレン膜の張替えを含む試料作成再現性を調べるため,ルースパウダ法および加圧成型法で同一試料3ケを作成しそれぞれの検量線で定量しました。測定結果を表2に示します。

表2 試料作成再現性 mass%
成分 ルースパウダ法 加圧成型法 R% 比
平均値 R% 平均値 R%
CaO 39.80 0.30 39.46 0.035 8.6
SiO2 37.13 0.48 36.83 0.14 3.4
Al2O3 14.42 0.19 14.37 0.13 1.5
T.Fe 0.330 3.6 0.317 1.9 1.9
MgO 4.958 0.40 4.921 0.37 1.1
TiO2 0.526 0.38 0.554 1.7 0.22
MnO 0.432 0.62 0.461 0.87 0.71
K 0.503 0.60 0.498 0.20 3.0
Na 0.216 3.7 0.210 2.9 1.3

試料3ケの変動率R%はTiO2,MnOを除きルースパウダ法の方が大きな値を示します。特にCaO,SiO2は試料作成再現性の影響で検量線の正確度が低下したと考えられます。試料の充填度および平面度が変化しているものと思われ,分析精度を向上するには試料の採取量および充填度を一定にするなどが考えられます。

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