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二結晶蛍光X線分析装置を用いたガラス中の イオウ成分原子価分析技術

リガクジャーナル 2023年 10月54巻 2号 通巻120号
01-08
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酒井千尋,福島整,伊藤嘉昭,長嶋廉仁,本郷年延

 

ガラスに含まれるイオウ成分の原子価(価数)の定量分析を行うために,反平行に配置した2枚のGe(111)分光結晶を搭載した広域型二結晶蛍光X線分析装置を用いて,分析技術の確立のための調査を実施した.本研究では,SKαプロファイルを高分解でピーク分離するために,状態標準のプロファイルとして硫化亜鉛ZnS(S2-),斜方イオウ(S0),亜硫酸ナトリウムNa2SO3 (S4+),および硫酸ストロンチウムNaSO4 (S6+)の実測スペクトルを用いた.これらの測定からSKα (SKα1 とSKα2)に対して多重ピーク分離が可能になり,ガラスに含まれるイオウ成分に対してS2-とS6+の原子価の定量的な分析が可能となった.その結果,著者らはガラス試料に含まれるイオウ成分の酸化・還元の状態と原子価の関係を明らかにし,ガラスに含まれるイオウ成分の化学的な原子価がガラスの表面とその内部で異なることを示した.非破壊での高分解能蛍光X線分析法によるイオウ成分の原子価の定量分析は,ガラスの熔融や加熱の過程での酸化・還元状態の定量的な変化を明らかにすることができる.

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