松本 崇 山野 昭人 佐藤 孝
X線小角散乱(Small angle X-ray scattering: SAXS)は,溶液中の蛋白質のサイズや形状を分析するための手法とし て知られている.標準的なSAXSでは,q=0.25 Å-1 程のデータを使用する.このため,SAXSでは,対象分子の サイズの変化,凝集,おおよその分子の外形といった情報しか得ることができない.
一方,q=0.30~0.65 Å-1 程 の中角領域のX線散乱は,分子内のドメイン間距離や二次構造間距離といった溶液中の分子構造及びコンフォ メーション変化を解析するための重要な情報を含んでいる.この中角領域のデータを用いることで,より詳細な 分子の挙動やコンフォメーション変化を可視化することができると考えられる.この重要な中角領域の情報を含 む溶液散乱を“middle angle X-ray scattering: MAXS”と名付けた.本ジャーナルでは,MAXSを用いた3次元分子 可視化法により捉えられた,溶液中の抗体の柔軟なコンフォメーション変化について紹介する.
Rigaku Journal article pdf
この記事をダウンロードする
(5.69 MB)